第一回
突撃せよ3on3
SGCTマスターズの挑戦


 
 2005年、4月24日、正午。東京博品館に3人の戦士が姿を現した。
ムシキング最高峰ムシキングミュージアム。そこで「ムシキングミュージアム杯 第二代3on3王者決定戦」が今まさに開催されようとしていた。


 4月14日、SGCT掲示板に一件の書き込みがされた。

 「今、公式ページ見たら第二代3on3の掲示がありました。SGCTでチーム組んで出たら面白そうですね。」

 メンバーの親は皆、心が躍った。そして県内に留まらず戦いの場を全国に向けようとしている3名の戦士が名乗りを挙げた。静岡県ムシキング第一人者の山本安輝、SGCTのリーダー的存在の瀧本亮太、初代3on3出場経験を持つ蓮池湧(現ONMG所属)の3名である。 MASTERと呼ばれるこの3人の力が東京で試される。チームのメンバー誰もが期待した。



 4月23日、決戦前日。
来週のジョニー大会のエントリーを兼ねて作戦会議が行われた。今回のレギュレーションとしてそれぞれ小型、中型、大型の甲虫を使うことが義務付けられている。試合の流れを左右する小型、安定した力が必要とされる中型、最も責任重大な大型。誰がどのムシで行くか、順番はどうするかを話し合い、最終結論が出た。

 先鋒:蓮池湧   (小型)
 中堅:山本安輝 (中型)
 大将:瀧本亮太 (大型)

 
「このメンバーで戦う事を誇りに思い、楽しんでこよう」


 4月24日、決戦当日。
会場には関東を中心とした有名プレイヤーで溢れていた。当の3人は緊張しているのか口数が少なかった。元々大会では仲の良い友というより、力を認め合ったライバル関係の3人であり、チームワークといった面で不安が残っていた。更にこの会場独特の雰囲気に飲まれているかのようだった。しかし時間は待ってはくれない。抽選が行われ一回戦の相手が決まった。

 チビキングキッズ。未知の対戦相手である。先鋒の湧は早々とゲーム台に向かい相手を待った。相手の先鋒は中型甲虫をスキャンした。いよいよマスターズがベルト奪取に向けて動き出す。湧は落ち着いていた。ムシの差を跳ね返し勝ち残った。更に相手チーム中堅の小型甲虫をレッドまで追い込む順調な滑り出しを見せた。4月に入り不調だった湧は、安堵の表情を見せた。
 続く中堅の山本安輝が台についた。冷静に2匹目のトドメを刺す。いつもと変わらぬ漂々とした戦いぶりである。相手大将の体力を半分削ったところで、瀧本亮太にバトンを渡した。
 亮太は深く深呼吸をしカードをスキャンした。
亮太はミュージアムに思い入れがあった。初代の頃よりGC王決定戦に毎回応募をしていたが、抽選に漏れ続け出場の夢が叶う事はなかった。静岡1,2を争うGCホルダーの力をこの場所で見せる時がやってきた。
亮太は貫禄を見せる。完璧な打ち回しで危なげなく勝利を決めた。
試合さえ始まってしまえばこの3人に心配は無用だった。
SGCTマスターズは初陣を見事に飾った。

 別ブロックでは初代チャンピオンチームのシロカブト3とGC王2人を配するGC王&プラチナが初戦で姿を消す幕明けとなっていた。しかし決して波乱ではなかった。相対したチームもまた負けず劣らずスタープレイヤーを揃えていたのだ。

 続く2回戦の相手は千葉ムシキングチーム。大将に大人を配した難敵である。
試合が始まる。先鋒小型同士の戦いは相手の捨て身の攻撃の前に湧が先に倒れた。追う展開となりチーム内に張り詰めた空気が漂った。その嫌な流れを変えたのは安輝だった。先鋒にトドメを刺し続く2人目をも倒した。カナブンが、そして蛍が舞った。これで湧の負けを取り戻し逆にリードを奪う。しかし大人大将相手に裏を取りにいった安輝が返り討ちにあう。勝負の行方は亮太に委ねられた。
 心配をよそに初戦に続き亮太の読みは鋭かった。必殺2発を続けて決め勝利を決めた。亮太に迷いは無かった。

 ベスト4、これは初代3on3で湧が父と弟と組み残した成績である。

 
「今日はこれを越える。僕が倒れてもこの最高の仲間が控えている。」

 この頃からだろうか、3人にチームとしての仲間意識が芽生えてきたようだった。亮太は湧と安輝に飴を手渡し、準決勝前の張り詰めた緊張をほぐした。
準決勝の相手は「アルカキッズ」である。このチームのメンバーのN君には安輝と湧は面識があった。04オータムカーニバル、N君が静岡まで遠征してきた際に2人とも完膚なきまで叩きのめされた苦い経験があったのだ。その時の悔しさが頭によぎる。

 
「この日を待っていた」

 相手チームの先鋒はゴールド勇者の称号を持つ強豪。迎え撃つ湧は分身となるタイゴホンツノカブトに思いを込める。準決勝、戦いの火蓋が切って落とされた。
驚愕だった。相手のヒラタが2手で沈んだ。会場内にどよめきが走る。勢いに乗る湧は2人目も接戦の末倒した。
そして相手チームの大将N君が登場した。ここからアルカキッズの猛反撃が始まる。体力をイエローまで削ったところで湧が沈む。続く安輝も粘るもののN君の怒涛の攻撃の前に倒れた。やはり只者ではない。
 




トーナメント表
 亮太は2人が残したアドバンテージを見据えた。

 「絶対に負けない!」

 白熱したバトルが展開された。リードを生かし亮太が先に追い込む。しかし相手の最後の力が発動する。意地のぶつかり合い大将同士の勝負は最後の一手までもつれ込んだ。N君は先にボタンを押し席を離れて祈った。亮太は押しつぶされそうなプレッシャーに耐えながら残り一秒まで考え抜いた。勝つのはどっちだ?

 亮太が雄たけびを上げた。
同時に安輝と湧も拳を突き上げ亮太を称えた。バラバラだった3人が完全に1つになった瞬間だった。

準決勝、白熱の大将戦、左側が亮太

 とうとう決勝まで辿りついた。揃いのキャップを被った3人組に注目が集まる。

 決勝戦の相手はスタープレイヤーのみを揃えた「KRK」である。相手にとって不足などあるわけが無い。SGCTマスターズにとって最高の舞台で最大の試練を迎えようとしていた。そんな中、亮太が2人に声をかけた。


 「優勝しようね」

 2人は頷いた。戦いの場へ赴く湧に安輝と亮太が「頑張って」と声をかけた。にっこり笑った後、もう湧に後ろを振り返る余裕はなかった。
湧はタイゴホンを再度スキャンした。先鋒小型パームシ同士、裏の取り合いとなった。最後の一手、湧が制した。
 相手の中堅は、以前遠征先の勇者U予選で湧がじゃんけんに1回も勝てなかった鉄人と呼ばれる猛者だった。
だが、湧の目は怯む事はなく逆に鋭さを増していた。湧は相手が強ければ強いほど輝きを増す特性を持っているようだ。
 まさにミラクルだった。カナブンを上手く使い、準決勝に続き大将を引きずり出す事に成功した。相手の大将は神奈川県の豪敵R君である。
もし、ムシキングの神がいるのならこの時は湧に降りていたのだろう。初手、この日4発目となるスーパーサイドロックボムが炸裂する。それからも湧の快進撃は続いた。とうとう最後の一手勝負となった。まさか小型で3匹抜きの快挙を見せるのか?観客は息を飲んだ。
決勝戦、湧(右)の快進撃は続いた
 湧が倒れた。湧は一瞬、しまったと思った。相手のあいこやぶりを発動させてしまったからである。ムシキングで一番難しいのがトドメを刺すことであると言われている。カナブンさえ付けば残り数ミリからの大逆転などザラにある話なのだ。だが湧はすぐに要らぬ心配だと思った。何故ならば後に控えるのは安輝なのだから。
 安輝は「絶対に優勝してやる」と闘志を剥き出しにしていた。R君とは過去ムシキングの鉄人ウインターカップからGC王決定戦など大きな大会で幾度と対戦経験があり、安輝にはライバル心があった。

 安輝はあいこムシとなるエレファスゾウカブトをスキャンした。 
亮太と湧は安輝を見守った。

 しかし、相手が相手である。そう簡単には勝たせてはくれない。一手一手会場がざわめいた。そして、勝負を決する雄たけびが聞こえた。

 
「よっしゃあ!!」

エレファスがアクティオンを投げ放っていた。
割れんばかりの拍手の中、安輝がガッツポーズと共に後ろを振り返った。勝っても感情を表に出さない安輝が喜びを爆発させた。亮太と湧は、最高の笑顔で安輝を迎えた。3人は一しきり騒いだ後、現実と夢の境を漂ってるかのようにベルトを見つめていた。勝った。夢にまで見たベルトを手にすることができる。3人にもう言葉はいらなかった。

決勝戦、安輝(右)が勝負を決めた
 
 大会終了後、ジョニーとネブ博士にサインを貰うイベントがあった。安輝は3人の名前が書かれたゼッケンに、湧は相棒タイゴホンのカードに、亮太はSGCTの誇りを乗せたキャップにそれぞれサインをもらった。
 この3人が再び組む機会があるかどうかは分からない。だが、この3人が残した偉業、そして共に戦い共に笑ったこの日の思い出は、いつまでも消えることはないだろう。


+++++SGCTマスターズ永遠なれ+++++

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